「熟年離婚」というとシニア世代の離婚を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし「熟年離婚」は離婚したときの年齢ではなく、何年間結婚生活を送っていたかで定義されるものです。一般的には20年以上婚姻関係を続けてきた夫婦の離婚を「熟年離婚」と言います。

「離婚」に対する世間の風当たりが弱まり、2007年には年金分割制度ができたこともあって「熟年離婚」は増え続けています。今回は熟年離婚の原因について、多く見られるケースを中心にいくつかご紹介します。

暴力

暴力には、肉体的暴力(ドメスティックバイオレンス)と精神的暴力(モラルハラスメント)があります。どちらがより重い問題、とは一概には言えません。DVは殴られたり蹴られたり、ひどい場合には命に係わるような暴力を振るわれることがあります。誰が見ても夫が悪いと分かりますし、体に痣ができたり出血したりした時に病院に行き、医師に診断書を書いてもらえば、暴力の証拠として裁判でも認められます。

しかし、モラルハラスメントの場合、なかなか外部の人間は気が付くことはありません。言葉の暴力を受けた妻の心が血を流していても誰にも見えないので、妻がひとり耐えるしかないケースが多々あります。しかも、モラハラ夫の特徴は、日頃は穏やかな性格なのに何かのきっかけでスイッチが入ると突然激昂し始めるというものです。そうなるともう止まりません。自分の言葉に更に興奮しまくし立てるため、妻が口を挟む余地がないのです。

妻はいつ夫にスイッチが入るのか予測がつかないので、いつもビクビクしていなければなりません。こんな生活を何年も続けるうちに、妻の心はすっかり疲弊してしまいます。

異性関係

夫の不倫や浮気は、夫の想像以上に妻を苦しめます。それが例えたった1度のものであったとしても、妻の心の傷は生涯癒える事はないと言っても過言ではありません。夫の帰りが遅くなれば“また浮気をしているのではないか”と疑ってしまいますし、休日に出かけて行けば“彼女と会っているのではないか”と思ってしまうのです。夫側からは、何十年も前の浮気をいつまでも根に持たれたのでは敵わない、というぼやきが聞こえてきそうですがそれが現実です。

何年か前に妻が介護中の夫を殺害するという事件が起きました。動機は介護を苦にしたものではありません。夫が36年前の浮気の話を詳しく妻に話してしまい、カッとなった妻が夫に暴行を加え死なせてしまったのです。浮気のことは妻も承知していましたが、「妻としては一番聞きたくないことでした」と彼女は供述しています。

これは極端な例だとしても、浮気をされた経験がある妻のなかには、この話を聞いて考えさせられた方もいるのではないでしょうか。夫にとっては“たかが浮気”妻にとっては“されど浮気”なのです。度重なる夫の女性関係に悩まされてきた妻が熟年離婚を考えたとしても不思議はありません。

夫の両親の介護

夫の両親の介護が熟年離婚の原因になる場合には、2つのパターンが考えられます。

ます1つめは、何年も夫の親の介護をしてきて疲れ切ってしまった、夫がまったく協力してくれず労いの言葉もない、など実際に介護をしている場合です。「妻が夫の両親の面倒を見るのは当たり前」というスタンスの夫は、妻にとって頼りにならないばかりかストレスの根源になります。「自分の親なんだからもっと手伝ってくれても良いのに」という思いがくすぶり続け、ある日突然我慢の糸が切れてしまうことがあります。

もう1つは、これからやってくるであろう夫の親の介護に不安を感じて、熟年離婚を考えるパターンです。特に、夫の両親と折り合いが悪くストレスを感じている場合や、夫が妻よりも親の味方をするような場合には、妻の将来の介護への不安は倍増するでしょう。

夫の両親が二人とも突然死して介護が必要ないことだって考えられるじゃないか、という意見をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは当事者ではないから言える事かもしれません。介護が必要になった途端に離婚するよりは、そうなる前に離婚しておいた方が妻としても良心の呵責に苦しまずに済みます。自己防衛のための離婚と言ってしまえばそれまでですが、そのような心境に妻を追い詰めた夫にも責任があります。妻だけを責めることはできないでしょう。

好きな人ができた

「冬のソナタ」から始まった韓流ブーム。世の主婦たちが夢中になった韓流スターは何人もいます。このことから分かることは、女性にとって恋愛はいつまでも“永遠の夢”だということです。夫に求めても得られないときめきを韓流スターに求めたのです。

手の届かない“偶像”を追いかけている間は、何も問題は起きませんでした。ところが今はネット時代になり、男女が出会うことはそれほど難しいことではなくなっています。たとえ専業主婦であっても、ネットを使えば同じ趣味を持つ異性や気の合う異性とオフ会などで出会うことができます。初めは恋愛目的ではなかったとしても、たまたま出会った男性が、包容力にあふれ話をじっくり聞いてくれるような優しいタイプだったとしたら?

前回の『不倫にはまる女性の心理~既婚編~』でもお伝えさせていただきましたが、“本当の自分を受けとめてくれる人”は誰にとっても大切な存在です。長年連れ添った夫を捨てても後悔しない!というほど好きな人ができた妻が、あっさり家庭を捨ててしまう可能性は十分考えられます。

借金問題

リストラに遭ったことを家族に言えず、消費者金融などに借金を重ねながら会社に通っているフリをするケース。株式投資などに失敗して借金が膨らんでしまったケース。借金問題は熟年離婚の原因のなかでも、常に上位にランクインしています。

しかし、借金自体が離婚の原因になるというよりは、借金した後の夫の言動が離婚につながることが多いようです。夫が開き直って反省の様子を見せなかったり、更に借金を重ねるような行動を取ったりするほうが、妻にとってはダメージが大きいのです。

俗にいう“飲む・打つ・買う”などが原因の借金の場合、さらに離婚率は高まります。

「俺が稼いだ金をどう使おうが俺の勝手だろう!」と言うのが夫の言い分だとしても、妻にとってみれば到底受け入れられない言葉です。借金を背負い生活が苦しくなると、心も荒みがちになりますので、夫婦関係が悪化の一途をたどるケースも少なくありません。

夫の定年退職

定年退職を迎えた夫が、1日中家のリビングを陣取りゴロゴロしている様子を見て、ストレスを募らせる妻は多いです。「今まで働いてくれたのだから我慢しなければ」と頭では考えるものの、これまでの生活のペースは一変してしまいます。自分ひとりなら簡単に済ませていた昼食もきちんとしたものを作らなければならない。掃除機をかける時に夫が邪魔。友達と好きなときに会えなくなった。些細なことに思えるこれらの事柄が、じわじわと夫婦関係に亀裂を生じさせる原因になります。

特に「何もしない夫」や「無口な夫」は要注意です。“家事に協力して欲しい”“もっと会話を増やしたい”という妻の願いを無視し続けると、思いもよらない事態を招いてしまいます。

まとめ

熟年離婚の原因についていくつかご紹介してきました。20年以上連れ添った相手と別れるには、相当な葛藤や不安、迷いがあるはずです。しかし、長い年月をかけて蓄積されたストレスにはすさまじい威力があります。妻が熟年離婚を決断するとき、それは重ねに重ねた我慢が爆発するときなのかもしれません。