介護の辛さは介護を経験した人にしか分からないと言います。特に在宅介護の場合、介護者は24時間365日休みがありません。生活のほぼ全てが介護一色に染まってしまいます。

なぜ介護が辛くなるのかというアンケートを取った時、回答の上位に必ず来る答えが、「終わりが見えないから」というものです。人間は、いつまで続くか分からないストレスフルな状況に弱い生き物です。そのうえ、介護の終わりを願うという事が、要介護者の死を願うことと直結してしまうため、「早く介護から解放されたい」という本音すら口に出来ません。

しかし、同じストレッサー(ストレスを引き起こす物理的・精神的要因)を受けても、それをストレスに感じる人と、感じない人がいます。介護の場合も同様で、介護ストレスに押しつぶされてしまう介護者もいれば、介護をそれほど苦にせずにいられる介護者もいます。両者の違いとは一体何なのでしょうか。

介護ストレスを少しでも軽減するために必要なことや、気持ちの整理の仕方について考えてみたいと思います。

介護ストレスを感じやすいタイプの人とは

真面目で几帳面な人や、責任感の強い人、何でも完璧にこなさないと気が済まない人などが挙げられます。要介護者のために全力で尽くしてしまい、気が付いた時には疲労困憊の状態に陥っています。

また、人に弱音を吐くのが苦手な人や、何でも自分の胸のうちに秘めて我慢してしまうタイプの人も要注意です。介護は一人で行うものではありませんし、また行えるものでもありません。ただ、どうしても主な介護者にならざるを得ない立場の人はいます。その立場になった人が、誰にも相談せず介護のストレスや不満を口にしなかったら、周囲の家族も安心しきってしまい、何か手伝おうとはしないものです。

すると、介護の負担はますます主な介護者に集中してしまい、介護疲れで心身を病んでしまうなど、介護者本人にとっても周囲の家族にとっても、大変な事態を招きかねません。

特に、男性の介護者の場合は、「男が弱音を吐くなんて格好悪い」など男性としての面子にこだわったり、介護と仕事を同じような感覚で考えてしまい、介護を完璧にこなすことが、自分の能力の証明に繋がるような錯覚に陥る方が多いようです。

「介護ストレスを軽くするための発想の転換力」

介護者のストレスを少しでも軽くするためにまず実践して頂きたいのが、介護者自身の考え方を少し変えてみることです。人を変えようとしても変えられませんが、自分は変えられます。今までの思い込みやこだわりを捨てる事で、介護は随分楽になります。

介護を人生の第一優先課題から外してみる

来る日も来る日も介護に明け暮れていると、自分が生きている意味は要介護者の世話をするためだけのように感じて、虚しくなる事はありませんか?

「わたしは介護ロボットじゃない!」と叫びたくなるのは、介護を自分の人生の第一に考えるべき課題として、あなた自身が捉えているからです。

確かに、今あなたの時間は、介護に最も多く費やされているでしょう。けれど、あなたの人生にとって一番大切なことを、介護をする事と考える必要はありません。介護をしているからといって、自分のやりたい事を我慢していると、自分の人生を見失ってしまいます。いつまで続くのか分からない介護だからこそ、心の中での優先順位を下げてみて下さい。

家族の介護が辛いのは当たり前

「大切な家族の介護が辛いと感じる自分は、冷たい人間なのかも知れない」と考え罪悪感を抱えていませんか?

要介護者にとって、家族の介護は有難いものではありますが、家族という気安さからつい甘えが出てしまい、介護者に不満やストレスをぶつける事になりがちです。一生懸命介護をしているのに、要介護者から感謝されるどころか、苦情を言われてしまっては、介護者も心穏やかではいられません。

また、家族は要介護者が元気だった頃の様子もよく知っています。変わり果ててしまった今の要介護者の様子を目の当たりにして、悲しんだり、落ち込んだり、時には憐れみや侮蔑の感情を持つこともあります。病人を相手にこんな事を思ってはいけない、と自分の感情を押し殺さずに、感じる事は感じるままにしておきましょう。家族の介護が辛いのは当たり前の感情です。あなたが冷酷な訳ではありません。

辛い時は声を大にして訴える

遠方にいる家族には頼れない、仕事で忙しいあの人には愚痴を言えない、と一人で全面的に要介護者を抱えていませんか?あなたが「辛い」と周囲に訴えなければ、状況は今のまま何も変わりません。あなたの辛さにさえ、家族は気付いていないかも知れないのです。

遠方の家族にも、金銭面で介護を支える事や、年に何度かは要介護者を預かるなど、出来る事は必ずありますし、身近にいる家族であれば、なおさら助けになる事はあるでしょう。声を大にしてまずはあなたの辛さを家族の皆さんに伝えて下さい。

「そんなに追い詰められていたなんて知らなかった」と、手伝ってくれる家族も出てくるかも知れませんし、少なくともあなたが疲れている事や介護の大変さは、家族の認識として共有されます。これまでは、あなたがして当たり前と思われていた事も、これからは感謝や労わりの気持ちを持って、受け止められるのではないでしょうか。

完璧な介護でなくても大丈夫

要介護者に少しでも快適に生活して欲しいという思いから、完璧な介護を目指して疲れていませんか?

介護者は介護のプロではありません。かゆい所にも手が届くような介護を目指さなくて良いのです。要介護者の生活の質を少しでも上げてあげたいと思うあなたの優しさこそが、要介護者にとっては何よりも得難いものであり、お金では買えない大切なものです。

あなたの介護を受けている要介護者は幸せな人であり、幸運な人でもあります。

一日にひとつ要介護者に喜んでもらえる事があったら、その日の介護は大成功と思いましょう。自分でもうまくいったと思える出来事や、要介護者からの感謝の言葉などを日記に記しておくのもおすすめの方法です。日々の小さな積み重ねを書き記していけば、後から読み返した時に、「私ってこんなにも頑張っていたのか」と、大きな自信にもなります。

介護サービスをフル活用しよう

終わりの見えない介護が辛い、と感じるのはあなたの心や体からのSOSのサインです。「疲れた。もうこれ以上頑張れない、誰か助けて!」という心身の声に耳を傾けて下さい。そんな時は、ストレスの元からなるべく遠ざかるのが一番です。

使える介護サービスをフル活用して、介護から離れる時間を作り出して下さい。要介護の状態によって居宅サービスの一ヶ月の利用限度額は決まっていますが、ケアマネージャーとも相談し、デイサービスやショートステイだけではなく、訪問看護や訪問介護など、予算が許す範囲内で介護のプロにお任せできるところはお任せします。

自由な時間を確保できたら、誰にも遠慮する必要はありません。自分の好きな事をして、ストレスを発散しましょう。趣味に時間を費やすのも良いですし、友達と会って話を聞いてもらうのも気分転換にはもってこいの方法です。介護に時間を取られ、これまでやりたくても出来なかった事を、思いきり楽しんでください。

まとめ

介護をしている最中は、誰でも疲れたりストレスを感じたりするものです。大切な事は、その疲れやストレスをどのようにして最小限に留めるか、ではないでしょうか。

終わりが見えないからこそ、全力で走るのではなく、ペース配分を考え、手を抜けるところは抜き、介護者の負担を減らしながら、介護とじっくり向き合っていきましょう。