いつもと変わらない平凡な毎日。ふと電話のベルが鳴り、何気なく受話器を取ると、電話口から「あなたのお子さんが万引きをしました。すぐに来て下さい」こんな声が聞えてきた時、あなたならどうしますか?

警察庁が発表した「平成29年の刑法犯に関する統計資料」によれば、平成29年に万引きで検挙された未成年者(14歳から19歳)は7552人です。小学生も含めれば、その数は更に増えます。店側の配慮で警察に通報されなかったケースも多いでしょう。

子ども達にとって万引きは、最も身近な犯罪と言えるのではないでしょうか。

なぜ子どもは万引きをしてしまうのか、我が子が万引きをした時に、親はどのように対処すれば良いのかを考えていきます。

子どもが万引きをする様々な原因とは?

子どもが物事の善悪の判断が出来るようになるのは、大体小学校に上がる頃から、と言われています。親や周りの大人から「お店で売っている物には、お金を払わなければいけません」と、よちよち歩きの頃から教えられているにも関わらず、子ども達はなぜ万引きをしてしまうのでしょうか。

欲しいから盗む

“欲しいけれど親に買ってもらえない”“友達が持っているから、自分もどうしても欲しくなった”など、自分の欲求に勝てずに万引きをしてしまう、小学校低学年の子どもに多いケースです。物を盗むのは悪いこと、という自覚はありますが、それがどれほど悪い事かが、まだ理解できていません。

スリルを味わいたい

中学生以降の思春期になると、タブーを犯す事にスリルを感じる子どもがいます。悪事が露見するかしないかの、ギリギリのスリルを味わう事に快感を覚えるため、万引きをして何かを手に入れるのが目的ではなく、万引き行為そのものが目的になってしまいます。

友達に誘われる

交友関係に影響され、万引きをする子どもがいます。日常的に万引きをしている友達がいる場合、万引きという行為にそれほどの抵抗心を抱かなくなります。知らず知らずのうちに、万引きに慣れてしまうのです。そんな時、友達から一緒に万引きをしようと誘われたらどうでしょう。

断ったら友達に嫌われるかも知れない、という心理が働いたり、友達がいとも簡単に万引きをしている様子を見て、万引きに対して好奇心が芽生えていることも考えられます。

イジメで万引きを強要される

学校でイジメを受けている子どもが、万引きを強要され、拒絶しきれずに万引きをしてしまうケースもあります。万引きをするよりも、イジメがエスカレートをする事を怖れる気持ちの方が強いと、嫌々ながらも万引きをする事に応じてしまいます。

心の穴を物で埋めようとする

親が自分の気持ちを受け止めてくれない、親が自分のことを認めてくれない、友達との関係がうまく行かず孤立している、など、寂しさや虚しさを物で癒やそうとして、万引きをする子どもがいます。

しかし、物では決して心の穴を埋めることはできません。底の空いたペットボトルに水を注いでいるようなものです。どうしても万引きを止められず、依存症のような状態になってしまう子どももいます。

SOS発信

両親の仲が悪く、子どもの前でたびたび夫婦喧嘩をしたり、夫婦共働きで子どもに関わる時間が極端に少ない、など家庭環境に問題がある場合、子どもはSOSの代わりに万引きなどの問題行動を起す事があります。

心が「助けて!」と悲鳴を上げているにも関わらず、それを口に出す事が出来ないので、子どもは無意識のうちに、自分に注目が集まるような行動を取ってしまいがちです。

親がまず取るべき行動とは?

子どもが万引きをした、という知らせを受けた親は、その場にへたり込んでしまうほどのショックを受けるかも知れません。「一体なぜ?」「自分の育て方が間違っていた?」など、今考えても仕方のない事が頭の中を堂々巡りしたり、親によっては、「あの子がそんな事をするはずがない、これは何かの間違いだ」と現実逃避的なことを考えます。

いずれの場合も、パニック状態に陥っているためですが、まずは一刻も早く冷静になる事が先決です。すべてはそれから始まります。

子どもと対面する時に気を付けたいこと

万引きで捕まった子どもの胸中を想像してみて下さい。店の保安員や店長、場合によっては警察官に取り囲まれて、平気な子どもはいません。平気なふりをする子はいるかも知れませんが、内心は怯えと不安で震えているはずです。

現場に到着した親が、いきなり子どもを怒鳴りつけたり、泣き崩れたりすると、子どもはますます動揺します。子どもの元へ駆けつける前に、心に誓って欲しいことがあります。それは、「取り乱さない」「大声を上げない」「子どもを責めない」ことです。

とにかく店側に謝罪する

未成年の子どもが迷惑を掛けたのですから、保護者として店側に謝罪するのは当然ですが、世の中優しく諭してくれる店長ばかりではありません。

誠心誠意謝罪をしても、子どもや親の人格まで否定するような、ひどい罵声を浴びせられる事もあります。“何もそこまで言わなくても……”と、感じるかも知れません。

ただ、どんなに責められようが、罵られようが、反論せずひたすら謝って下さい。

親の惨めな姿を見せられれば見せられるほど、子どもは心の底から反省します。もう二度と、親にこんな思いをさせてはいけない、と万引きをやめる可能性が高くなります。

万引き対応のベテラン店長になると、そういう子どもの心理をよく理解しているために、わざと親に厳しく対応する方もいるようです。

子どもの話をじっくり聞く

自宅に帰ったら、まずはなぜ万引きをしたのか、子どもに理由を聞いて下さい。子どもはすぐには答えなかったり、本当のことを言おうとしないかも知れません。ここで親が我慢できずに、激しく叱責したり、体罰を加えてしまうと、子どもは心の扉をぴったりと閉めて鍵をかけてしまいます。

「あなたがどんな話をしても、全部受け止めるから安心して話して良いんだよ」というメッセージを、子どもに伝えて下さい。

前述の、友達に強要されて万引きをした場合など、子どもにとってイジメを受けている事を親に告白するのは、大変勇気の要ることです。万引きの裏に隠された、子どもの心の闇を探るために、叱責よりもまずは子どもの話を聞くことが先決です。

原因別に対処法を考える

子どもから話を聞いて、万引きをした理由が明らかになった時点で、子どもをどう諭すかを考えます。万引きについて軽く考えているようなら、万引きは立派な犯罪なのだと教える必要があります。交友関係が問題なら、学校の先生やスクールカウンセラーに相談するなど、第三者の助けが必要になることもあるでしょう。

そして、親自身も子どもとのコミュニケーションが十分だったか、など、これまでの親子関係を省みて、反省すべき点は反省し、今後に繋げていきましょう。

子どもとの時間が十分に取れない場合は、交換日記などの形でも良いです。とにかく、いつも子どもが親との繋がりを感じられるような環境を整えるよう、努力して下さい。

もう一度親子で店に謝罪に行く

数日経って、子どもの心が落ち着いてきた頃に、もう一度親子で店に出向き、謝罪をして下さい。子どもは万引きが見つかった直後に、とりあえず「ごめんなさい」と口にはしますが、これは真の反省から出た言葉ではありません。

“これから自分はどうなるんだろう”と、自分の事を考えるのに精一杯の状態では、反省どころではないのが普通です。子どもが十分に反省をした後、改めて謝罪をさせます。子ども自身に自分のしたことのけじめをつけさせ、二度と同じ過ちを繰り返さない覚悟を促すためです。

まとめ

我が子が万引き犯になる。親にとって衝撃的な出来事には違いありません。しかし、親の対応次第では、これまで以上に親子の絆を深める事もできるのです。子どもの問題行動を、親子関係を見直すチャンスと捉え、子どもの内面をしっかりと見つめるきっかけにして頂ければと思います。