幼少期から思春期にかけての子どもに、親がどう関わっていくのかは、子どもが成人してからの親子関係にも大きく影響します。なんとなく親子の仲がしっくり行かない、子どもの方が親を避けている、など、親子関係がうまく行かなくなる原因とはいったい何でしょうか。具体的な例をいくつか挙げながら説明していきます。

親子の相性の悪さを、親が放置してしまう

親子も人間対人間の関係です。当然、相性の良し悪しはあるでしょう。例えば、親と子どもの性格が正反対の場合などは、お互いに理解し合う事が難しくなります。しかし、相性が悪いことが問題なのではありません。親が子どもとの相性の悪さを放置してしまう事が問題なのです。「この子の言動は理解できないから」と諦めてしまっては、親子の溝は深まるばかりです。

親が子どもに歩み寄り、子どもの目線で物を考える努力をしなければ、親子の関係は冷え切ってしまいます。分からないからこそ、子どもとたくさんコミュニケーションを取り、話し合って、子どもが今何を考えているのか知らなくてはいけないのです。

もしもタイプのまったく違う親子が、お互いに足りないところを補い合い、良い所を伸ばし合えるような関係になる事が出来れば、親子の相性の悪さは逆にプラスに働くでしょう。そんな親子関係を築けるように努力を続けて行けるかどうかが、将来に渡り子どもと良好な関係を保つためのキーポイントになります。

親が「自分の育児は絶対に正しい」と思い込む

親だからと言って、常に子どもより正しいとは限りません。親も人間ですから当然間違えることはあります。しかし、自分の育児は絶対に正しいんだ、と思い込んでしまう人がいます。

「親の言う通りにしておけば、間違いはない」という台詞を聞いた事がありませんか?こういう環境で育った子どもにとっては、親は保護者というよりも支配者のような存在です。

子どもが幼い頃は、恐怖のために素直に親の言う事を聞くでしょう。すると、親のほうはますます自分は正しいと思い込んでしまいます。しかし、子どもが成長して思春期になり、第二次反抗期を迎える頃には、それまで溜まりに溜まった親への反発が一気に爆発してしまう恐れがあります。

また、このタイプの親は、絶対に子どもに謝りません。一言「ごめん」と言えば、子どもの心が随分落ち着くような場面でも、自分が悪いとは思ってもいないので、せっかくの子どもとの関係修復の機会を逃してしまいます。

子どもの前で夫婦喧嘩をする

大好きなお父さんとお母さんが目の前で大きな声で言い争う姿を見せられると、幼い子どもの心は不安と恐怖でいっぱいになります。

いつもはニコニコしているお母さんの恐ろしい形相を見て、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす子どももいる位です。また、何でも自分のせいにしてしまうのは幼児の特徴と言えます。「自分が悪い子だから、お父さんとお母さんは喧嘩しているんだ」と思い込むことは、子どもの自己肯定感を低下させることにつながるのです。

子どもが小学校高学年や中学生になると、夫婦喧嘩を見たくないために、自室に引きこもって両親と距離を取ろうとします。夫婦喧嘩によって自分の心をこれ以上傷付けないための、子どもなりの防衛手段と言えます。

両親を無視することで自分の心を守ろうとする子どももいます。

大人にとってはたかが夫婦喧嘩でも、子どもの心には大きな痛手となり、後の親子関係にも悪影響を及ぼしかねないのです。

条件付きの愛情

例えば子どもが学校のテストで100点を取った時に、親が「わー、すごいねー!」と大袈裟なくらい誉めたとします。そして、次のテストで98点だった時に「あ、そう」という反応をしたとしたら、子どもはどう感じるでしょうか。

「お父さん(お母さん)は、100点を取る自分が好きなんだ。それ以外の自分は好きじゃないんだ」と思うのではないでしょうか。いわゆる、条件付きの愛情です。

完璧主義の親が取りがちな態度ですが、親に悪気がなくても、子どもの心は傷付いてしまいます。

子どもはどんな自分でも、親には丸ごと受け止めて欲しいと望むものです。しかし、親は完璧な自分しか好きではないのではないかと疑い始めると、子どもは親の愛情を信じることが出来なくなります。また、完璧ではない自分は親から拒絶されるかも知れないという恐怖心から、親に愛情を求めることをやめてしまう場合もあります。

親の夢や願望を子どもに押し付ける

叶わなかった自分の夢を、子どもに代わりに叶えてもらおうとする親がいます。

昔、サッカー選手になるのが夢だったからという理由で、父親が息子の意見も聞かずサッカー教室に入れてしまったり、学歴にコンプレックスを持っている母親が、幼い子どもに英才教育を受けさせて、ゆくゆくは有名大学に入学させようとしたりするケースです。

子どもにとっては迷惑でしかない行為ですが、親にはそんな自覚はありません。むしろ、子どもの為に親として良い事をしている、と錯覚している場合すらあります。

親が子どもの人格を尊重しないのは大きな問題です。子どもを自分の所有物のように考えてしまっているのです。

子どもが幼い時は親の言う事を素直に聞くかも知れませんが、成長し自我に目覚める頃になると、自分を思い通りに動かそうとする親に反発する子どもは少なくありません。その時に親が自分の身勝手さに気付き、反省することができれば良いのですが、単なる反抗期だ、と軽く捉えると後で子どもからきついしっぺ返しがきます。

子どもは、親から操り人形のように扱われ続けることに、いつまでも我慢できるものではありません。いずれ、精神的にも物理的にも、親の元を去って行く可能性は高くなります。

言葉の暴力(心理的虐待)

殴る、蹴るなどの身体的虐待や、ネグレクト(育児放棄)などは、親子の関係を悪化させる原因として、とても分かりやすい例です。虐待をする親にも「これは悪いことだ」という自覚が大なり小なりあるでしょう。

ところが、心理的虐待と呼ばれる言葉の暴力は、非常にデリケートで難しい問題です。

悪気がなく言葉の暴力を振るう親は大勢いますし、子どもの性格や心理状況やその時の環境によって、それが暴力になったりならなかったりします。

しかし、どのような状況でも、絶対に口にしてはいけない事があります。それは、子どもの存在そのものを否定するような言葉です。「あんたなんか産まなきゃ良かった」「お前なんかうちの子どもじゃない」などと親に言われた子どもは、一生その言葉の呪いにかけられたまま、人生を台無しにしてしまう事もあります。

言葉は大きな力を持っています。それが凶器になった時、子どもの心はずたずたに傷つけられ、親を憎んだり恨んだりする原因になるのです。

反抗的な子どもの態度に、頭に血が昇る時もあると思いますが、そこで感情に任せて子どもを怒鳴りつけるのはやめましょう。一度口に出した言葉は二度と消えてくれません。後で後悔しないよう、言葉の選び方には注意してください。

まとめ

親子の関係がうまく行かなくなる原因について考えてきましたが、ここで挙げたものはほんの一例に過ぎません。「子育てとはなんて難しいのだろう」と感じた方もいらっしゃるでしょう。しかし、それは、子どもにとって少しでも良い親でありたいと願っているからこそ生まれる感情です。

親子とはお互いに唯一無二の存在です。親の代わりも子どもの代わりもどこにもいません。歩み寄り、時には適度な距離を置いて、良好な親子関係を保ちたいものですね。